退去後の復旧と、次の入居者に向けた更新を分けると、工事の目的と予算の優先順位が見えやすくなります。

原状回復とリフォームは目的が違う

原状回復は、退去後の損傷や汚れを確認し、契約と負担区分を踏まえて必要な状態へ整える考え方です。賃貸リフォームは、設備の古さ、使い勝手、室内の印象、想定する入居者などを踏まえ、募集に向けて更新する工事も含みます。実際の現場では、清掃や補修と設備更新を同時に行うこともあります。

二つを分ける目的は、工事を別々に発注するためではありません。借主負担の判断、貸主が行う維持管理、募集のための投資を整理し、見積りの意味を分かりやすくするためです。

まず復旧が必要な箇所を確認する

退去後は、壁・床の傷や汚れ、水回り、設備の動作、建具、収納を確認します。写真は全景と近景を組み合わせ、いつ、どの部屋を撮影したか分かるようにします。通常損耗や経年変化と、故意・過失などによる損傷の扱いは、契約内容や原因を確認して判断します。

復旧が必要な箇所が見えたら、清掃、部分補修、張り替え、交換を比較します。すべてを新品にすることが原状回復とは限らず、逆に見た目だけ整えて設備の不具合を残すことも避けます。

次に、募集方針に合わせた更新を検討する

原状回復の範囲を整理した後、想定する入居者、募集時期、周辺物件との差、予算を見ながら更新候補を検討します。洗面台やエアコンなどの設備、床材、収納、建具は、使い勝手と室内全体のまとまりを確認します。

更新すれば必ず賃料や入居率が上がるわけではありません。工事以外にも立地、賃料、募集条件、写真、管理状態が関わります。期待する効果を言葉にし、そのために必要な工事かを一項目ずつ判断します。

部分改修と全面改修を比較する

予算が限られる場合は、安全・機能に関わる箇所、傷みが進んだ箇所、入居者が触れる箇所から優先順位を付けます。既存設備を残すときは動作、年式、補修部品、周辺内装との取り合いを確認します。部分改修は費用を抑えやすい一方、仕上げの境目や将来の追加工事も考慮が必要です。

入居中工事では、騒音、作業動線、設備を使えない時間、室内への立ち入り、入居者と管理側の同意を先に確認します。空室工事と同じ工程をそのまま当てはめないことが大切です。

事例の数字は条件と一緒に読む

内装工事の一例として、台東区では床、独立洗面台、キッチン収納周辺などを1,667,160円・30日間で整えました。江東区では予算条件を踏まえ、クロス・床・収納などを891,000円・30日間で施工しました。工事箇所と予算の組み立て方を考える材料としてご覧いただけます。

金額と工期を比較するときは、面積、設備、下地、材料、搬入、管理規約を確認します。事例の数字を定額商品と考えず、自分の物件で何を残し、何を更新するかを相談するための材料として使います。